中国のサッカー代表チームは、人口や資金力に恵まれていながら、なぜ強くなることができないのでしょうか?
今回は、その理由について深く掘り下げてみます。
計画的強化が行われているにもかかわらず、なぜ成果が出ないのか。
その背景には複雑な要因があります。
計画的強化の限界
中国は計画的にサッカー強化を進めていますが、その計画に限界が生じています。
何が問題なのでしょうか?
- 五カ年計画の背景
- 計画が進む中で発生した腐敗
- 適切なチームプレーの欠如
中国政府は五カ年計画という詳細な計画を立て、サッカー強化に力を入れています。
例えば、2011年の「サッカー強化計画」では、スタジアムの建設や育成プログラムの整備が進められました。
しかし、その一方で、計画が進む中で広がったのは、賄賂や汚職といった腐敗です。
多額の補助金が適切に使われず、サッカー強化の本質から外れてしまったのです。
さらに指導方法にも問題がありました。
例として、ある海外のコーチが中国のユースチームを指導していた際、彼は守備の得意な選手をディフェンダーとして育てようとしましたが、親が抗議して息子を稼げるフォワードにさせようとしました。
これではチームプレーを学ぶことが困難です。
結果として、献身的なプレーができない選手が多く育ち、強いチームを作ることが難しくなってしまいました。
資金投入とその影響
お金があれば全て解決するのか?
中国サッカー界に投じられた大量の資金がどのように影響したのか探ります。
- 高額移籍金の問題点
- 海外選手への依存とその結果
- 財政難によるチームの解散
中国サッカーリーグ(CSL)は一時期、欧州のトップリーグに匹敵するほどの資金を投じて、海外のスター選手を数多く招聘しました。
しかし、この高額な移籍金は持続可能な育成に使われるべきお金でもありました。
結果的に、瞬間的な強化は果たしたものの、長期的な視点が欠如していたため、財政難に陥るチームが多く出てきました。
2018年頃には多くの選手との契約が終了し、海外選手の流入も減少。
さらにコロナの影響もあって、資金繰りが厳しくなり、中国サッカー界全体の勢いが失速しました。
この結果、国内リーグのチームが次々と解散し、育成の基盤が揺らいでしまいました。
国民性とサッカー文化の欠如
国民性や文化もサッカーの強化に影響を及ぼしていると言われています。
具体的にはどのような点が問題なのでしょうか?
- 団体競技への不向き
- 一人っ子政策の影響
- 短期的視点と長期的目標の欠如
中国では、団体競技がもうまくいかないと言われる背景には、国民性が関係しています。
一人っ子政策の影響で、多くの子どもたちが個人主義的な性格を形成し、献身的なプレーやチームワークを学ぶ機会が少なくなっています。
卓球や陸上競技などの個人競技では中国は非常に強いですが、団体競技であるサッカーにおいては苦戦しています。
さらに、短期的な収益を重視する傾向が強く、長期的な育成や計画的な強化が不足しています。
例えば、資金を投入して一時的に強いチームを作っても、その後の育成や次世代の選手育成に資金を回さず、結果的に長期的な強さを維持することができません。
国内リーグと育成の問題
国内リーグの充実度が選手育成に大きな影響を与えます。
中国の国内リーグにはどのような問題があるのでしょうか?
- クラブチームの解散が頻発
- 育成環境の未整備
- 質の高い国内リーグが育てられていない
中国の国内リーグは、経済的な不安定さから多くのクラブチームが解散の憂き目にあっています。
例えば、広州城や深圳FC、大連人など、近年多くのチームが解散しています。
これにより、選手たちが安定してトレーニングや試合に臨むことが難しく、スキルの向上も阻害されてしまいます。
また、サッカーにおける育成環境が整っていないことも大きな問題です。
日本のように部活動が盛んでないため、サッカーを始める環境が少なく、才能ある若手を育成する土台がありません。
この結果、質の高いプレーヤーが育たず、国内リーグのレベルも向上しません。
短期的成功への執着とその弊害
一時的な成功を求めることが長期的な強化基盤を損なうことがあります。
中国が抱えるこの問題について詳しく見ていきましょう。
- 高額投資による一時的な成功
- 長期的視点の欠如
- 短期的収益を重視する姿勢
中国サッカー界は一時期、サッカー超大国を目指して大規模な投資を行いました。
500億円を超える移籍金を使い、欧州からスター選手を招へいするなど、一見華々しい成功を収めたように見えました。
しかし、このような短期的な成功に固執する姿勢が問題を生んでいます。
長期的な視点で見れば、サッカーの強化には時間と継続的な努力が必要です。
例えば、日本ではJリーグが設立されてから、徐々に国内リーグの水準が向上し、現在の日本代表の強さがあるのです。
しかし、中国では短期的な成果を求めるあまり、継続的な育成プログラムや若手選手の成長が疎かにされているのです。
指導者の質と指導方法
指導者の質と指導方法も重要な要素です。
中国のサッカー指導における問題点を探りましょう。
- 適切な指導者が少ない
- 海外コーチの離職問題
- 保護者の過干渉
中国には多くの海外から優秀なコーチが招かれていますが、彼らの多くが短期間で離職してしまいます。
その原因の一つとして、指導に対する保護者の過干渉があります。
先に述べたように、保護者がコーチの判断に異議を唱え、自分の子どもに有利なポジションやプレーを強要することがあります。
このような環境では、コーチたちが本来持っている指導力を発揮することが難しくなります。
また、国内の指導者に関しても、質の高いコーチが少ないのが現状です。
質の高い指導者がいなければ、選手たちが技術を身につけ、成長することができません。
指導者の育成もまた、サッカー強化において重要な要素であることが理解されていません。
海外経験の欠如
海外での経験は選手のレベルアップには不可欠です。
中国選手たちが海外でプレーする機会が少ない理由とは?
- 国内リーグの高額年俸
- 海外クラブとの契約の難しさ
- 国際試合の少なさ
中国の選手たちは国内リーグで非常に高い年俸を受け取ることができるため、わざわざ海外クラブに移籍して挑戦する動機があまりありません。
国内で安定した収入を得られる一方で、海外での厳しい競争環境を避けがちです。
また、多くの中国選手たちは海外クラブとの契約を結ぶ際に言語や文化の壁に直面します。
このため、海外での活躍が難しくなり、国際的な経験が積めません。
国際試合の数も少なく、海外の強豪クラブとの対戦経験が不足しているため、技術力が国内にとどまってしまいます。
競技人口の実態
競技人口が多ければ強いチームが作れるとは限りません。
中国における実際の競技人口の現状について探ってみましょう。
- サッカー協会に登録された競技人口
- 都会と田舎の違い
- サッカーをする環境の未整備
中国の人口は非常に多いですが、サッカー協会に登録されている競技人口は日本に比べて一桁少ないと言われています。
その理由の一つとして、都会と田舎の格差が挙げられます。
都会ではサッカーをする環境が整っていないことが多く、そもそもサッカーを始める機会が少ないのです。
また、学校にサッカー部が設置されている場合が少なく、部活動も充実していないため、サッカーをする子どもたちが少ない状況です。
これでは、世界レベルで通用する選手を育てることが難しいのも納得です。
教育システムの圧力
中国の教育システムはサッカー選手の育成にどのような影響を与えているのでしょうか?
- 学業重視の文化
- 部活動の未設置
- サッカーに専念するリスク
中国は超学歴社会であり、学業が非常に重視されています。
そのため、サッカーに専念する子どもは少なく、ほとんどが学業を優先します。
学校には部活動がなく、クラブチームに入るためには自費で参加する必要があるため、サッカーを続けることが難しいです。
サッカー選手として成功するリスクは非常に高く、多くの子どもたちは安定した将来を求めて学業に専念します。
このような背景が、競技人口の少なさや、才能ある若手の育成不足につながっています。
コロナ禍と経済問題
最近のコロナ禍と経済問題が中国サッカーに与えた影響について詳しく調べてみましょう。
- コロナ禍による試合・練習の制限
- 企業の経営問題
- 資金繰りの悪化
コロナ禍は全世界のサッカー界に大きな影響を与えましたが、中国サッカーもその例外ではありません。
多くの試合や練習が中止となり、サッカーをする機会が大幅に制限されました。
この結果、選手たちのモチベーションが低下し、スキルの向上も難しくなりました。
さらに、中国の多くの企業が経営問題に直面し、サッカーチームへの投資が減少しました。
例えば、広州恒大などの大手企業が経営破たんの危機に瀕し、これによりサッカーチームへの資金提供も難しくなりました。
これにより、強化費用が確保できず、選手の育成やチームの強化が困難になりました。
まとめ
中国サッカーがなぜ強くならないのかを見てきました。
計画的な強化は進められているものの、腐敗や適切なチームプレーの欠如、短期的な成功に依存する傾向、教育システムの圧力など、多くの要因が中国サッカーの成長を阻んでいます。
今後もこれらの課題を解決することができなければ、中国がサッカー超大国になることは難しいかもしれません。
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